借用書の返還は返済と同時ではないのですか?
借用書というのは、通常は債権者が持っているもので、債権者が借用書を持っている限り、債権は存在していると推定されます。
反対に、債権者が債務者に借用書を返還した場合には、債務はすべて弁済されたと推定されます。
よって、借金を返済した際に、借用書を返還してもらうことはとても重要です。
というのは、弁済しても借用書を債権者が持っているままですと、債務はまだ存在していると推定されてしまい、二重に支払わなければならない恐れが生じてしまうからです。
法律的にはどうなっているのですか?
民法487条では、次のように規定しています。
⇒ 「債権証書は、弁済者が全部の弁済をしたときは返還請求することができる」
ここに書かれている「債権証書」というのは、債権の成立を証明する書面のことで、借用書もその一種ということができます。
しかしながら、この規定では、借用書は弁済と同時に返還しなさいとまでは言うことはできないと解釈されています。
これは、次のような理由によります。
■弁済と領収書の交付は同時でなければならないとされているので、これにより債務者の保護としては十分だから。
■借用書を紛失している場合にまで弁済と同時に返還せよというのは、債権者に酷であり、不合理といえるから。
このように、借用書と領収書の取り扱いは異なっていますので注意してください。簡単にまとめると、次のようになります。
■領収書
領収書の交付は、弁済と同時でなければならない。
■借用書
借用書の返還は、弁済と同時でなくてもよい。 |